人間関係に悩まずビジネスで成果をあげるには?

社会人1年目に知っておきたい、心に関する3BOOKS

自分の小さな「箱」から脱出する方法

人間関係のパターンを変えれば、うまくいく!

著者名:アービンジャー インスティチュート、金森 重樹、冨永 星

大和書房; 1版 (2006/10/19)

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人間関係に悩まずビジネスで成果をあげるには?

書評

社会で生きていくためには人と人との関係を全く持たないことは不可能です。しかししばしば、人はその関係に悩み、苦しみ、時にはそのことが頭の中のほとんどを占めてしまい、何も手につかなくなってしまうことすらあります。
本書は、人間関係が悪くなる原因を「箱」という概念を用い、自分の感情への裏切りからくる自己正当化が招いた状態であると説明しています。
人間関係に関する書籍は心理学的なアプローチで記述されるものが多くあります。しかし本書ではそのような専門的・学術的な記述はなく、ビジネスの現場で一定の地位にある2名の対話によってストーリーが展開されていきます。易しく読み進められるものの、実はこの書籍は、心理学、哲学、経済など幅広い領域の専門家で構成された、人間関係の問題を専門的に研究する米国の研究所によって書かれたものです。本書は、深い研究に基づいた人間関係に関する知見を身近な話題と話法に落とし込むことにより、読み手が自身の経験と重ねながら理解を深めていくことができる構成になっています。

ポイント

  • 全ての人間関係の問題は箱の中の自分が引き起こす
  • 箱に入る=自己欺瞞(じこぎまん)の結果
  • 箱に入っているかどうかで成果は決まる

エッセンス

人間関係に一度も悩むことなく人生を送ってきた人はいないでしょう。親子、友人、同級生、先輩後輩、上司部下、同僚……人が生きていく上では、誰かと関わることを避けることはできません。人の悩みの多くはお金と人間関係だと言われますが、この言葉からも、人間関係の良し悪しが人生の幸福度や満足度を左右していることが理解できます。
本書では、「箱」という概念を使って、人間関係のトラブルを引き起こしている原因を説明しています。全ての人間関係の問題は、箱の中の自分が引き起こすという興味深い提示をし、箱の正体を知ることが、トラブルを回避し、ビジネス上の成果にもつながることを対話形式で伝えてくれます。

人間関係の問題は箱に入っていることが原因

箱とは、自分の感情を裏切った結果、自分を正当化する必要が発生し、正当性を維持するために相手を責める感情を持つ状態であるとしています。自分の感情を裏切ることを「自己欺瞞(じこぎまん)」と表現し、しようと思ったことをしないことを指しています。例えば、他人のために書類を準備してあげた方が良いだろうと思ったものの、面倒だという感情が湧き、結局準備しない――このようなことが自分の感情を裏切るということに当てはまります。自分の感情を裏切ると、その裏切りによって行われなかったことは正当なことであるという自分を守る感情が芽生えます。そして、そもそも相手が準備をすべきものだなど、相手を責める状態に繋がっていくのです。
この状態に陥ると、自分の正当性を維持するため、言動は全て自分を守るために行われることになります。自分の意識は自分自身に集中し、自分を中心に据えて考えるようになります。自分のためにだけ行われる言動は相手に見抜かれ、その結果、相手も自分自身を守る必要性が生じ、同じように自分の正当化を始めます。つまり、箱は新しい箱を生み出すのです。
こうなると永遠に利害が対立し、互いに自分を守るため、自らの主張だけを重視するようになります。誰もがこのような経験をしたことが一度や二度はあるのではないでしょうか。苦手なあの人や好きなあの人を想像すると箱の存在が見えてきます。しかし、相手の箱が見えた瞬間、自分も箱に入っている可能性が高いのです。全ての人間関係の悩みはこのメカニズムで発生しているのです。

人間関係を改善するにはどうすればいいか。

人間関係の悪化は、相手ではなく、自分が自分自身の感情を裏切った結果の自己正当化が引き起こしていることがわかりました。
悩んでいる人からすれば、どうにかしてこの悩みから解放されたいと思うものです。しかし、自分を正当化している状態では、一般的に思いつくような方法で関係改善を狙うことは本書では無駄であると諭されます。関係改善を望む時、多くの人はコミュニケーションを密に取ってみようとするでしょう。過去に人間関係に悩んだ時に、もっとコミュニケーションを取るようにアドバイスを受けた経験がある人も少なくないのではないでしょうか。
しかし、自分を正当化しているとき、それは相手にも知られています。つまり、この状態で行うコミュニケーションは、相手を悪だと設定した上で、自分にとって利のある状況を目指すために行われていることが相手に伝わっているのです。そのようなコミュニケーションを相手が快く受け入れるわけはありません。これが、関係改善のための一般的な方法が無駄であるという理由です。
では一体どうしたらいいのでしょうか。本書では、人間関係を改善することや良好に保つためには、箱から出る以外に方法は無いとします。そして、箱の外に出るための方法は、「相手を尊重すべき個として認めること」と極めてシンプルに表現されます。相手を尊重すべき個として認めていれば、自己欺瞞(じこぎまん)、つまり、相手に対して何かをしてあげたいと思った自分の感情に背くことを回避します。その結果、自分を正当化する必要性も無くなるのです。自己正当化が相手の自己正当化も生む負の連鎖を断ち切るためには、相手を尊重するというとてもシンプルで、一見特別ではないことが必要であると説明されています。
相手を尊重するということは、幼いころから何度も、家庭でも学校でも教えられます。それでも私たちが大人になっても人間関係の悩みから完全に解放されることが無いのは、人にとって、自分を正当化することなく、相手を尊重することがとても難しいということなのでしょう。

箱から出るとビジネス上どんな効果があるのか

自分を正当化することなく、相手を尊重するということは人にとって非常に難しいことなので、これが実践できれば大きなアドバンテージになります。
まず、自分を正当化している間は、意識は自分自身を守ることに向いているので、本来目指すべき成果に向かうことができません。向かっているのは自分を相手の攻撃から守り、地位や名誉を守ることになってしまいます。こういう人には誰も付いては行かないですし、当然協力も得られません。
一方で、箱から出ている、つまり、相手を個として尊重している状態での言動も同様に相手に伝わるため、相手を献身的な気持ちにさせたり、相手の情熱を掻き立てたりすることに繋がります。たとえ厳しい発言をしたとしても、それが相手を個として尊重しているという前提が成立していれば、その厳しい表現にも周囲からの理解が得られるのです。
この状態にあれば、人間関係の悩みからは解放されているため、ビジネスにおいては向かうべき課題に向き合い、成果を追い求めていくことができるようになるのです。
 
人間関係の悩みは誰もが抱えるものです。しかし、箱に入る、つまり、自分を正当化している状態に陥るメカニズムを理解し、それを回避・改善することで、その悩みから解放されることが本書では示されています。加えて、これが実践できれば、ビジネスの現場では、良好な人間関係にある人々を巻き込むことができます。どんなビジネスもたった1人で行えるものなどありません。当然、良好な人間関係の中で、自分の目標を理解してくれる情熱を持った人をより多く巻き込めたほうが、成果をあげるためのレバレッジは何倍にもなります。
もし、職場という新しいコミュニティに加わる場面で、箱に入った自己正当化の人と、箱から出ている他者尊重の人がいれば、上司や先輩はその人たちをどう扱うでしょうか。本書で自分を裏切り、自分を正当化することによって人間関係を悪化させる箱というメカニズムを理解すれば、答えは見えてきます。箱のメカニズムを理解することは、職場という新しいコミュニティでも良好な人間関係を構築し、一足早く成果をあげるための大きな一助となるはずです。

人間関係に悩まずビジネスで成果をあげるには?

自分の小さな「箱」から脱出する方法

人間関係のパターンを変えれば、うまくいく!

著者名:アービンジャー インスティチュート、金森 重樹、冨永 星

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