人の心はどうやって動かされるのか?

社会人1年目に知っておきたい、心に関する3BOOKS

影響力の武器

影響力の武器

なぜ、人は動かされるのか

著者名:ロバート・B・チャルディーニ、翻訳:社会行動研究会 (翻訳

誠信書房 (2014/7/10)

Amazon詳細ページへ

無料版はYouTubeの音声でお楽しみ下さい。

人の心はどうやって動かされるのか?

書評

誰かに何か頼みごとをした際、すぐに引き受けてもらえたり、あるいはちょっとした違いで引き受けてもらえなかったりしたことはないでしょうか。逆に、気が進まない頼まれごとを反射的に引き受けてしまったことはないでしょうか。
この本は、そんな反射的な行動を引き起こす心理トリガーの存在を解説し、人の心に与える影響力の使い方とそれを巧みに操る人への対抗策を紹介しています。興味深いことに、社会心理学者である著者は、研究のためにわざわざ、誘導のプロであるセールスや広告業界などの世界にスパイとして3年間潜入し自ら観察したというのです。その上で確立された理論だと思うと、なおさら知りたくなります。
心理トリガーは6つ紹介されています。人間の基本的な心の仕組みであるがゆえに、多くの人は認識すらしないまま動かされているのです。いやいや、私は心理トリガーくらい知っていますよ、という人もいるかもしれませんが、この心理トリガーの影響力を改めて学び、仕事のみならずプライベートでも影響力を発揮してみませんか。

ポイント

  • 人は「刺激」に対して「反応」するという行動を、無意識かつ自動的に行っている
  • 人を自動的に動かす六つの行動原理とは何か
  • 行動原理の仕組みを使いこなす

エッセンス

人はどうやって動かされているのでしょうか。それは、動物が「刺激」という信号にとっさに「反応」するのと同じです。そのような反応は「自動的反応」と呼ばれるものです。この本では、この自動的反応を引き起こす行動原則を六つ紹介しています。そして、ほとんどの人は頻繁に自動的反応を繰り返しているにも関わらず、その行動原理には気がついていない、ということです。

人は「刺激」に対して「反応」するという行動を、無意識かつ自動的に行っている

七面鳥の母鳥は優しく、用心深く、ヒナを守ります。その行動は、ヒナたちの「ピーピー」という鳴き声によって引き起こされます。ヒナのピーピーという鳴き声がイタチのはく製から発せられても、母鳥は同じように反応することがわかっています。つまりヒナの鳴き声が「刺激」となって、母鳥はヒナを守るという「反応」をしているのです。動物にみられるこうした規則的で自動的な行動パターンのことを「自動的反応」と言います。そして、これは人にも見られるのです。
専門家が言うなら正しいに違いない、あるいは医師からの指示をそのまま信じてしまうというのも、自動的反応の一つです。「専門家の肩書き」があるというだけで、吟味することなく指示に従ってしまうことが多いのではないでしょうか。
人は、様々な情報の中でただ一つの特徴的な情報が「刺激」となって、機械的に「反応」してしまいます。この自動的反応は、日々行っているにも関わらず、ほとんどの人がこの仕組みの存在を知りません。それほど無意識に行われている、ということなのです。
そして、自動的反応を巧みに使いこなす人に対しても、人はあまりに無防備です。この仕組みを熟知している人は、自分の要求を通すために、さまざまな「刺激」を影響力の武器として用いているのです。

人を自動的に動かす六つの行動原理とは何か

本書では、自動的反応を引き出す行動原理を六つ紹介しています。それらは、返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性です。この本の中でも是非とも覚えておきたい概念なので、ここでは一つずつ紹介していきます。
 
返報性
人間社会において最も広範囲に存在し、最も基本的な慣習の一つとなっているのが返報性です。他者から何かを与えられたら、自分も同じようなやり方で相手に返すように努めてしまうことです。集団の中では、この原理を忠実に守ることや、守らないと非難を受けるなどの制裁があることを子供の頃から刷り込まれます。
返報性の原理には三つの特徴があります。一つは、この原理が非常に強いこと、二つ目は、受けた恩恵より多くを返してしまい不公平が起こりやすいこと、三つめは、行為の受け手が相手を選べないことです。例えば、スーパーで試食をするとつい買ってしまうとか、バレンタインデーに望みもしない相手から好きでもないチョコレートをもらったとしても、ホワイトデーにお返しをしてしまうことなどです。人間は、何らかの恩恵を受けると、その恩恵を受けっぱなしにするのが不快でそれを取り除こうとして、受けた見返りよりも大きなものを差し出してしまう傾向にあるのです。たとえそれが自分の望まない相手であってもです。
 
コミットメントと一貫性
人には、自分のとった行動を一貫したものにしたい、他者からもそう見られたい、という欲求があります。この原理は、最初に何らかの意見や立場の表明をすると、人はそれに引っ張られその後も以前の決定を踏襲し一貫した反応を行おうとてしまうことです。この原理の怖いところは、いったん立場を表明するとその立場を変えにくくなることです。この習性を利用され、最初は些細なコミットメントを引き出し、最終的には自らの決断として、相手に大きな譲歩をしてしまうことがあります。
例えば、車の販売店では、まず客にとても有利な条件を提示し、客が自分の意思で購入する、という決定を誘い出します。いったん決定がなされたあと、契約が完了するまでの間、販売店は最初に提示していた有利な条件を少しずつ取り除いていきます。客は購入を決めたという自らのコミットメントに正当性を与えようと、その条件の変更を受け入れがちになります。
 
社会的証明
人がある状況で決断を行う際に重視するのが、他人がどう行動しているかです。つまり他人を模倣しようとする反応です。これを「社会的証明」と言います。この原理が最も強く影響するのは、自分の判断に確信が持てない曖昧な状況で、類似性がみられる場合です。
社会的証明の一つの例として有名なのは、お笑い番組での録音された笑い声です。多くの人が不快に感じるにも関わらず頻繁に使われているのは、ネタがつまらなくても視聴者の受けがよくなるという結果が出ているからです。視聴者は、あの笑い声が露骨なニセ物だとわかっているにも関わらず、その笑い声をつい模倣して、楽しい気分だと勘違いしてしまうのです。
 
好意
人は自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向があります。この原理が「好意」です。好意が強く影響するのは、身体的魅力、類似性、称賛、馴染み、関連付けなどがみられる場合です。例えば身体的魅力は、ほかの特性に関する評価を高める、というハロー効果をも生じさせます。選挙では外見が魅力的な候補はそうでない候補の2.5倍もの票を獲得したという結果があります。有権者は身体的魅力の影響は一切受けなかったと断言しているにもかかわらずです。
 
権威
この原理は、権威には従うべき、という社会的な圧力からくるものです。本当の権威者や専門家は優れた知識と力を持っていることが多く、それらの人に従うことは理にかなっていることである場合が多いのです。一方で、権威だからと反応してしまうと、短絡的な意思決定として、思考が伴わない危険性もはらんでいます。権威にはその実体がなくても、肩書き、服装、装飾品などの単なるシンボルにも人は反応してしまう傾向があります。
 
希少性
人は数量や期限などの機会を失いかけると、その機会をより価値のあるものとみなすという原理です。希少性の原理が効果をあげるのは、入手困難なものは貴重であると思われて、すぐにその価値が高いと判定してしまうからです。さらに、入手困難であるとき、人はその選択の自由がなくなることへ焦りを感じ、自由の喪失に対して反応してしまうことかからも希少性の効果が発揮されてしまいます。

行動原理の仕組みを使いこなす

日々膨大な情報の中から多くの決定を迫られる現代において、すべてを熟考することはできません。無意識のうちに物事を判断してしまうのは、ある意味では合理的です。その意思決定プロセスの短縮の恩恵を受けつつ、一方で私たちはこの本で紹介されている六つの行動原理を理解しておく必要があります。それによって、本当に自分の意思決定が適切であるのかを立ち止まって考えることができるようになるからです。
日々の仕事においても、専門家などから意見を求めることはありかもしれません。ここで専門家を「権威だから」とむやみに捉え、意見にそのまま従うのも考えものです。彼らの知識や経験を上手に取り入れて、自分なりに考えることができれば、より良い判断ができるようになるのではないでしょうか。

最後に

人の心はどうやって動かされるのでしょうか。
人は自分が思っているより単純で、ちょっとした刺激に無意識に、そして、自動的に反応してしまうものです。この人間の自動的反応は、意思決定のプロセスを短縮する「思考の近道」という恩恵をもたらします。一方で、その行動原理が自分の頭で考えることを阻害することもあります。またこの原理を操って用い罠をかける人がいるかもしれないので、危険な原理でもあるのです。
六つの行動原理の一つである「返報性」は、いわゆる「ギブアンドテイク」です。この返報性を期待して、人に「ギブ」をする人がいるかもしません。そんな人から「ギブ」をされ続けていると、いつの間にか相手の思惑にすっかりハマってしまうのです。
一方で「テイク」を期待しないで普段から「ギブ」をしている人もいます。こうして「ギブ」し続けている人は、思いもよらないタイミングで、びっくりするような贈り物を受け取っているものです。自分の行動の原理を忘れたころに。

人の心はどうやって動かされるのか?

影響力の武器

影響力の武器

なぜ、人は動かされるのか

著者名:ロバート・B・チャルディーニ、翻訳:社会行動研究会 (翻訳

誠信書房 (2014/7/10)

Amazon詳細ページへ

forumコミュニケーション力

社会人1年目に知っておきたい、心に関する3BOOKS

  • 嫌われる勇気
  • 影響力の武器