考えるとは、どういうことか?

何事も最初が肝心、新入社員研修で読ませたい3BOOKS

思考の整理学

思考の整理学

東大・京大で1番読まれた本

著者名:外山 滋比古

筑摩書房 (1986/4/24)

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考えるとは、どういうことか?

書評

1983年に単行本として発売された本書は、大学生の必読書として、40年近くたったいまも読み繋がれている。いわば「知的生産の教科書」ともいえる存在感である。頭の中で何かがひらめいたり、新しいアイデアが生まれたり、関係のないことがつながって新しい解釈が生まれたりする。これらはすべて「考える」行為から生まれた結果である。ところが、この日常的な行為は、誰もが当たり前のように行なっていながら、そのメカニズムを誰も言葉にしてこなかった。それを丁寧に言語化したのが本書である。
全体は33のエッセイで構成される。その一つひとつが、具体例とともに、「考える」行為の一端を紹介し、知的創造をどのように効率的に行うか、そのヒントを与えてくれる。
学生の必読本となっている本書は、勉強に必要なことだけが書かれたものではない。本の読み方から、メモの取り方、頭に浮かんだアイデアの取り扱いから、もっとも効率よく考えることができる時間まで。具体的なノウハウもあれば、抽象的な法則も多く紹介されている。仕事で考えることがますます求められるビジネスパーソンにとっても必読書であり、むしろ仕事をする上での土台となる考え方を示した本とも言える。考えることの原点を教えてくれる本書は、何年かに一度は読み返したくなる本であろう。

ポイント

  • 学ぶと創造するは何が違うかーーグライダーと飛行機
  • 人の頭脳には何が求められるかーー倉庫と工場
  • 考えることと感じることは別かーー第一次の現実と第二次の現実

エッセンス

日頃、誰もが当たり前にやっていることほど、言葉で説明するのは難しいものです。「考える」という行為はその代表でしょう。誰もが、普段から何かにつけて頭を使っている。しかし、「考える」とはどういう行為かと聞かれたら、多くの人は簡単に答えられないのではないでしょうか。
この本では、考えるという行為について、わかりやすく解説しています。そもそも考えるとは何か。考えると学ぶとの違いは何か。深く考えるとは何か。これらを明確にすることで、無意識だった考えるという行為に、より意識が向かい、効率のいい頭の使い方法が見つかります。
ここでは、本書に登場する3組の言葉の対比から、考えることの本質に迫ります。

学ぶと創造するは何が違うかーーグライダーと飛行機

学校という場所は、先生がいて教科書があります。そして生徒は、これら先生と教科書に引っ張られるかのように学びます。つまり、生徒は引っ張ってくれる存在があるので、それに導かれるように知識の習得へと羽ばたくのです。まるで動力を持たないグライダーのようなものです。
しかし、グライダーは自力で飛ぶことができません。飛行機のようにエンジンがないからです。
学校教育で優秀と言われる人は、このグライダー能力が高いと言えます。教えられたことをきちんと吸収することで、優秀だと評価されるのです。しかし、課題を与えないと何もできないのが難点になります。自ら課題を見つけて、それを学習するのが飛行機能力です。これはなかなか学校教育で教わる機会は少ないものです。
グライダー能力が有効なのは、教えてくれる人がいて、目標がはっきりと定まっている場合です。しかし、新しい文化の創造には飛行機能力が欠かせません。学校でグライダー能力を磨いた人も、これからはエンジンを搭載した飛行機能力を高めなくてはならないのです。

人の頭脳には何が求められるかーー倉庫と工場

学校では授業で習ったことを、きちんと覚えている人がいい成績を取ります。そして、多くの試験は、勉強したことを覚えていること、つまり記憶力が問われます。このように、頭にどれだけ知識が収まっているかが重要視されてきました。この発想は、頭脳を倉庫のように見立てています。倉庫の中にどれだけ多くの知識が詰まっているか。多くの知識が収納されていれば、必要な時に即座にそれを引き出すことができるからです。しかし情報や知識の収納は、コンピュータが圧倒的に得意な時代となりました。それでも人間の頭は、知識の倉庫としての役割を期待されるのでしょうか。
頭を倉庫ではなく、知識を作り出す工場として考えてみましょう。
 
工場としての頭は、知識の保管は期待されません。むしろ無用にたくさんのものがあると混乱するだけです。多くのものが氾濫していると、効率よく生産できません。そのため整理が必要になりますが、工場では不要なものはどんどん捨てていくのがいいとなります。
 
つまり倉庫としての頭は知識を捨てず、覚えていることが大切になりますが、工場では不要な知識を忘れてもいいのです。これまで覚えることを叩き込まれてきた私たちにとって、これは驚きでしょう。知の生産において、習った知識をそのまま覚えておくことは、さほど重要でなくなります。
人は面白いと思ったことは些細なことでも忘れません。忘れるものは自分の価値観に沿っていないので、むしろ覚えているものこそが、自分が知的生産をする上で、その人独自の武器になるのです。とりわけデジタル時代は知識を覚える価値が下がり、知識を生み出す価値が高まるのです。工場としての頭には、余計なものに邪魔されず、自由に発想できるような大きな空間が必要なのです。

考えることと感じることは別かーー第一次の現実と第二次の現実

最後にややこしい話ですが、現実には2つある、という話をさせてください。
一つ目は、当たり前ですが、人が実際に物理的に日々過ごしている日常の現実です。社会に生きる我々はこの現実の中に生きています。
そして二つ目は、本を読むことなど知的活動によって頭の中に作り上げた現実です。本を読むことは、先人の考えたことを知り、自らできない経験を知る、得がたい知的行為です。そして読んだものから思考は発展し、その人の思索の体系が生まれます。その思索の世界は、その人にとっての一つの現実です。つまり本などから間接的に触れた現実です。
前者を「第一次の現実」と呼び、後者を「第二次の現実」と呼びます。
本などで勉強することとは、この間接的な第二の現実を育てることになります。それは多様で膨大な知識の中から、新しい知識のつながりを作り出すことができます。従来、知識や思考は、このような頭の中の体系と思われてきましたが、本物の知性とは、直接的な経験である第一の現実を伴ったものでなければいけません。
本を読んだり、人の話を聞いたりして学ぶことがある一方、机の上では学べないことが無数にあります。自ら経験しないとわからないことがある。この第一の現実で「感じた」ことに根づかない思考は迫力がありません。著者は本を読んだり、一人で考えたりすることと同様に、感じることや実際に体を使って働くことの重要性を強調します。これらも、知的行為なのです。社会で働くとは、まさにこういうことです。企業で与えられた現場で格闘すること、自らの仕事に必死に取り組むこと。それこそが思考の現場そのものです。
 
本書で著者は次のように述べています。
「人々の考えていることに汗のにおいがしない。したがって迫力に欠ける。意識しないうちに、抽象的になって、ことばの指示する実体があいまいになる傾向がある」と。
 
先にグライダーと飛行機のたとえをしましたが、第一の現実に根ざした思考とは、まさに飛行機のことです。自ら社会と関わって、積極的に働くことはエンジンであり、そこから生まれる探求こそ、知的創造活動です。仕事をしながら考えたことを整理し、新しい世界を作る。これがビジネスパーソンに求められる思考です。

最後に

本書が発売された1983年はパソコンでさえ一部の人の間でしか普及していない時代でした。人工知能など夢物語。そんな時代に書かれた本書ですが、コンピュータにできない人間の知的活動について読者に問いかけます。そしてそれは知的創造でしかないと主張し、そのための方法論が紹介されているのが本書です。40年近く前なのに驚くばかりですが、それが長く読み継がれてきた理由でしょう。
 
不確実性の増したいま、新しいことを生み出す思考はますます重要になっています。あなたはグライダーなのか、飛行機なのか。そしてあなたの頭は知識の倉庫なのか工場なのか。そして、自ら仕事で感じたことから思考をしているか。本書を読みながら、これらを自分に問い直してみてください。そして、きっと何年かに一度は読む本となるでしょう。時代を超えて生き残った本は、読む人の成長に応じて新たな気づきを与えてくれるものです。

考えるとは、どういうことか?

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東大・京大で1番読まれた本

著者名:外山 滋比古

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