人生の目的を考え、意義ある人生を実現するには?

自分のキャリアは自分で育てる、人生100年時代を生き抜くための3BOOKS

イノベーション・オブ・ライフ

イノベーション・オブ・ライフ

ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

著者名:クレイトン・M・クリステンセン、ジェームズ・アルワース、カレン・ディロン、翻訳:櫻井 祐子

翔泳社 (2012/12/7)

Amazon詳細ページへ

無料版はYouTubeの音声でお楽しみ下さい。

人生の目的を考え、意義ある人生を実現するには?

書評

「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」というトヨタ自動車社長の発言は、定年退職まで一社で働き続ける時代からキャリアを自分で選択する時代に移りつつあることを印象付けました。
この本は、イノベーション研究の第一人者である著者がハーバード・ビジネススクールで行う授業を書籍化したものです。著者は、生徒にどうすれば幸せで充実した人生を送れるかを問いかけます。どのような人生を選択すべきか。どのような仕事を選択すべきか。心臓発作、ガン、脳卒中と幾度もの大病を患いながら、著者が人生の中で見出した生き方のエッセンスが本書には詰まっています。
新しい時代において、人生や仕事に意義を見出し、人生の選択にイノベーションを起こしていただくためにお読みいただきたい一冊です。

ポイント

  • 成功者と言われるビジネスエリートは意外と不幸である。
  • 戦略や理論はよい人生を選択するための道具となる。
  • 人生の目的を見つけ、その実現への強い意志を持つべきである。

エッセンス

著者は、世界的なビジネススクールの教員という立場から、経営理論のレンズを通してビジネスの成功だけではなく意義ある人生の送り方について語ります。経営理論が人生の選択にどのように役立つのか、どうすれば充実した人生を実現できるのかについて、独自の視点を提供してくれています。

成功者と言われるビジネスエリートは意外と不幸である。

ハーバード・ビジネススクールの卒業生と聞けば、多くの人が世界のエリートをイメージすると思います。著者は、一部の卒業生が昇進や高い報酬にとらわれた結果、決して幸せではない人生を歩んでいるとした上で、達成動機の強い人は昇進や昇給などの見返りを求める一方、家族との時間などは見返りの少ないものと片付けやすい傾向にあるといいます。たしかに人生の成功は何かと聞かれると、ついつい昇進や高い報酬などをイメージしてしまいます。その一方で、それらを手に入れるために知らず知らずのうちに家族を犠牲にしてしまう人がいるのも事実なのです。仕事の選択においても、本当は別の仕事内容に魅力を感じていたけど、高い給与の仕事を選んでしまったという経験をしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
また、著者は人生には何度も経験できないことがあると述べます。例えば結婚や子育ては何度もやり直しがきくものではありません。そのような場合に、人々は経験以外のものから意思決定する必要があり、戦略や理論がその助けになるといいます。

戦略や理論はよい人生を選択するための道具となる。

この本では、よい戦略によって優れた業績が達成されることや、理論によって優れた企業の活動が説明されるように、戦略や理論に沿って人生の選択を行うことができると説明されています。経営学の考え方について、三つの例をご紹介しましょう。
 
まずは、経営者が知っておきたい理論として有名なフレデリック・ハーズバーグの「動機付け・衛生理論」です。これは職務満足と不満足を引き起こす要因の理論であり、仕事への満足度は自分の仕事ぶりや達成感によって満たされる一方、不満は主に職場環境、報酬などの外部環境によってもたらされるとする理論です。つまり、よい仕事の選択を行うためには、報酬などの外部要因ではなく、何によって自分のモチベーションがあがるかなどの内部要因によって仕事を選択する必要があるのです。
 
次に、著者が「限界的思考の罠」と呼ぶ、論理的思考の限界について触れます。まず経営戦略とは何かからお話ししたいのですが、一般的に企業が保有するヒト・モノ・カネの経営資源が有限であるため、企業が選択的に経営資源を配分することと説明されます。論理的な経営者が戦略に基づき業績拡大を検討する際、まだ利益が出るかわからない市場に新規参入するのではなく、既存市場における自社の強みを活かして業績を拡大させようとします。これは合理的な選択にみえますが、新しい市場が既存市場を上回ったときには、もはや自社の優位性が通用しない可能性があるのです。このような論理的思考による限界を限界的思考の罠とお考えください。この本では、アメリカの映画レンタル業界の最大手ブロックバスターvsネットフリックスの事例で限定的思考の罠を説明しています。ブロックバスターという会社は1990年代末まで圧倒的な店舗数でアメリカの映画レンタル市場をリードしていた企業です。日本でいうと少し前のTUTAYAのようなイメージです。今や大企業となったネットフリックスですが、当時は一介の新興企業にすぎませんでした。ネットフリックスがDVD郵送サービスやオンラインレンタルサービスを開始したとき、ブロックバスターはその動向を注目しつつも、同市場はニッチ市場であると結論付け既存サービスの強化・改善に経営資源を投じました。この意思決定は、追加投資において既存資源の有効活用によるリターンのほうが大きいとするファイナンス理論に基づいてのものでしたが、結果同社は2010年に倒産しました。経営と同様に、人生の選択においてもこれまでの意思決定にとらわれずに、自分が何を選択すべきかを考える必要があるのです。
 
最後に、明確なビジョンを持つことの重要性について触れています。長期的に優れた業績を達成する企業の多くは、自分たちがどのように世の中に貢献するかの明確なビジョンを持っています。人生の選択においても、動機付け・衛生理論や限界的思考の罠を理解した上で選択を行っても、達成すべき目的がなければその効果は限定的であることを理解すべきなのです。

人生の目的を見つけ、その実現への強い意思を持つべきである。

やるべきことが見つかっていない人は、まずは少しでもワクワクするようなことを始めてみてはいかがでしょうか。人生の目的とは、日々自分と向き合ってこそ見つかるものです。著者が生涯をかけてビジネススクール教員として生徒の助けになろうと決断したのも、大病によって自分と向き合ったことがきっかけだといいます。人生の目的は待っていても見つかりません。人生とは経営と同じように偶然や世の中の流れに流されやすいようにできています。その中で充実した人生を歩むためには、自分自身で人生の目的を見出すことが必要なのです。
 
また、著者が「妥協の道」と呼ぶ誘惑に勝たなければなりません。妥協の道とは、ちょっとだったらいいや、今回だけ、といった、人生の目的から外れる一歩を指しています。この本では、イギリスの銀行を破綻に追い込んだ二十六歳のトレーダーの逮捕について触れています。このトレーダーが欲しかったものは成功者としてのステータスで、そのステータスを実現・維持するために少額のトレーディング損失を架空の銀行口座に付け替え、隠ぺいを図った結果逮捕されたのです。人生の目的の実現には、誘惑に負けない強い意志が必要なのです。

最後に

人生の目的を考え、意義ある人生を送るために、どのような思考法が必要かおわかりいただけましたでしょうか。職務達成に対する強い動機はとても大切なことですが、ビジネスの成功イコール幸せな人生とは限らないことと、人生の選択を迷ったときに経営理論が意外に役立つことと著者は教えてくれます。明日からどのような人生を送りたいか、世の中にどのように貢献したいかを胸に手を当てて考えてみてはいかがでしょうか。実現したい人生の目的が見つかれば、次の一歩が見えてくると思います。

人生の目的を考え、意義ある人生を実現するには?

イノベーション・オブ・ライフ

イノベーション・オブ・ライフ

ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

著者名:クレイトン・M・クリステンセン、ジェームズ・アルワース、カレン・ディロン、翻訳:櫻井 祐子

翔泳社 (2012/12/7)

Amazon詳細ページへ

thumb_up_altキャリアの作り方

自分のキャリアは自分で育てる、人生100年時代を生き抜くための3BOOKS

  • 「働く」ことについての本当に大切なこと
  • LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
  • イノベーション・オブ・ライフ